日本平は、静岡市街と清水港のほぼ中間にある標高307メートルの有度山(うどやま)山頂一帯の名称です。
大正時代の終わり頃、評論家・思想家である徳富蘇峰が「天下の絶景」と紹介したことによって全国にその名を知られるようになりました。
<日本平の評価歴>
昭和 2年(1927)「日本新八景・日本百景」平原の部入選
昭和25年(1950)「観光地百選」平原の部 第1位
昭和26年(1951) 日本平・三保の松原 県立自然公園に指定
昭和34年(1959) 国指定名勝に指定
昭和55年(1980)「日本観光地百選コンクール」第1位
平成28年(2016)「日本夜景遺産」に認定
引用:夢テラス館内掲示より
生粋の静岡県人である私も、日本平が景勝地としてこんなに評価されているとはつゆ知らず、今さらながらに見直した次第です。「よっ、日本一!」
ですが、周りにみどころがありすぎて、ついつい日本平山頂まで行く機会が少なくなっているというのが実際の所。
しかし!ついに!地味に有名だった日本平にも陽が当たる時がやって参りました!
そうです、あの新国立競技場を設計した隈研吾氏が手掛けた「夢テラス」!
360°の絶景 日本平夢テラス
「夢テラス」は、日本平の歴史的・文化的な価値を広く知ってもらうこと、そして世界文化遺産の富士山、日本一深い駿河湾、ユネスコジオパークの伊豆半島、南アルプスなど静岡が誇る360°の絶景を楽しんでもらうための施設として、静岡県と静岡市によって建てられました。
2018年11月3日にオープンし、4ヶ月後の2019年3月初頭には、すでに来館者が50万人を突破したほどの人気スポットなのでした。
さすが県と市がタッグを組んで取り組んでいるだけあって、駐車場の係の方に母があまり歩けないと告げると、親身になって障害者用駐車場を案内してもらえましたし、ボーっとしているとボランティアの方々がすかさず説明に来てくださいます。
整備されてキレイというだけでなく、人のぬくもりが嬉しい施設でもありました。
訪れた日は天気が悪くて絶景を撮影できませんでしたが、想像力で補ってご覧いただければ幸いです。
館内施設
1F 展示フロア
日本平の歴史や文化的価値を説明するパネルがずらりと並んでいます。
中でも、日本平の地形の成り立ちを説明するプロジェクションマッピングは大人気。モニターで画像と音声を流し、立体模型で実際に追体験できます。
この手の展示にこんなに人が集まっているのを見たことがありません。
一応勉強して来たことをおさらい。
日本平は、太古の時代は海底だった場所で、フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む際に海底を隆起させ、その後、浸食作用などで硬い部分だけが残って現在の形になりました。
今でも日本平は、1年で約3ミリづつ隆起し続けているのだそうです。
2F カフェラウンジ
素晴らしい景色を見ながら日本茶やお茶菓子がいただけます。
コーヒーがなかったようなので今回はパス。
- 1F 展示室のプロジェクションマッピング
- 2F カフェ
3F 360°展望台
外周が360°テラスデッキになっていて、要所要所に”富士山”、”駿河湾”など、見える場所が表示されています。ここから外の回廊に出られます。
屋外回廊
日本平デジタルタワー(静岡県のテレビ放送を送信する集約電波塔)を囲うように作られた空中回廊で、本体と同じく八角形。1周は約200mです。
徳富蘇峰が選んだ 日本平の絶景地点4箇所のうちのひとつ「吟望台」につながっています。
- 3F 展望テラス
- 屋外 電波塔を囲む回廊
直線が織り成すめくるめく幾何学的な世界
夢テラスを設計した隈研吾氏は、新歌舞伎座や新国立競技場の設計も手掛けた日本を代表する建築家の一人。スターバックスリザーブ東京やインスタ映えの聖地スタバ太宰府天満宮店も同氏によるものです。
- 夢テラス 全景
- 隣には電波等を囲うように回廊がめぐらされている
この夢テラス、全体の形や屋根・庇(ひさし)を下で支える木(垂木?)など、どことなく神社仏閣っぽいと思ったら、やはり法隆寺の「夢殿」をヒントにしたのだそうです。
だから「夢テラス」!(チャラいネーミングじゃなかった..汗)
設計を手がけた隈研吾建築都市設計事務所によれば、奈良・法隆寺「夢殿」にヒントを得たそうで、八角形というジオメトリーに挑戦したという。
そこで、東西南北という直交軸をベースにしながら、そこに斜線を持ち込むことによって、あらゆる方向にも拡張できる自由さを獲得。
引用: AXIS web magazine
確かに吹き抜けになっている内部の天井を見上げると、たくさんの直線が組み合わされて、あっち向いたり、こっち向いたり、頭がクラクラ。
この膨大な量の木材は、すべて静岡県産のヒノキと杉が使われています。
屋根や庇(ひさし)の重なりを下から見ると、鉄骨と木の組み合わせが機械的にも見えて面白い。妙な迫力があります。
地元の木材と、視線を邪魔しないガラスをまとった身軽な印象の夢テラスは、周囲の自然や電波塔にさえマッチして、時代に取り残された感があった日本平がいっきに明るくなったように感じられました。
飛び立つ鳥のように優美に拡がる大屋根を支える梁や、建物を支える美しい木組みの構造は加工が大変に難しく、隈氏も、この見事な仕上がりは地元建築業者の賜物と絶賛されていました。
引用: 静岡県公式ホームページ
youtubeに「日本平夢テラス」についての隈研吾氏ご本人のコメントがアップされています。どんな方なのか、どんなコンセプトで建てられたのかなど、一見の価値ありです。
みどころいっぱい日本平
日本平は、眺望を楽しむほか、静岡市立日本平動物園、久能山東照宮、静岡県立美術館など近隣には観光スポットが盛りたくさん。
夏には恒例日本平まつりが開催され、夜景遺産にもなっている景色をバックに、大花火ショーが繰り広げられます。
※2019年は7月24日(水)日本平ホテル野外庭園にて
日本平まつり公式サイトはこちら
日本平での宿泊のおすすめは、日本平からの景色をまるごと楽しめる高級ホテル「日本平ホテル」。1964年開業の老舗ホテルで、”風景美術館”と呼ばれるほどの贅沢なロケーションに立地しています。静岡市内でホテルを1ヶ所選ぶとすればこちら。
近くを通ることはあっても、なかなか日本平に登ろうという気にはなれなかったのですが、夢テラスが日本平を訪ねるきっかけを作ってくれました。
またひとつ静岡再発見。ありがとう、夢テラス!

