徳川家康が大御所政治を行い最期を迎えた駿府城。
静岡県庁があるのは、その三ノ丸跡というまさに駿府の中心地。
当時の面影を残すお堀や苔むした石垣に囲まれて、堂々と横たわる黄土色の建物が静岡県庁本館です。

時代背景が産み落とした建築様式
静岡市役所ドームを見学したあと、同じく中村與資平が手掛けた県庁本館に立ち寄りました。
同じ建築家でも、市役所本館とは雰囲気が違うみたいだけど、こちらもスペイン風っぽい建物だなぁ…などと思いながら訪れたのですが、これがまったくの的外れ。
実は静岡県庁本館は、1934年(昭和9年)実施のコンペに当選した泰井武の案に基づいて、県営繕と中村與資平らが実施設計したものでした。
最初から全設計を中村與資平に依頼する予算がなかったとか。
さらに、県庁本館は当時流行した和洋折衷様式で建てられていました。
この様式は帝冠様式と呼ばれ、鉄筋コンクリートの洋式の建物の上に、寺社建築のような和式の望楼・屋根を載せ、日本趣味を取り入れたもの。
大日本帝国の冠、という意味でしょうか。
このような様式がもてはやされた1930年代は、世界恐慌の影響から日本でも昭和恐慌が起き、大陸侵略によって景気を立て直そうとする軍国主義が台頭した時代。
世の風潮は排外的ナショナリズムに傾倒し、この頃の公共建築の類のコンペには、日本趣味を盛り込むように規定されることも多かったそうです。
しかし同時代に建てられた国会議事堂ですら、帝冠様式の設計案は却下されていることから、決して政府や軍から意匠統制への圧力があった訳ではないようです。
参考:wikipedia帝冠様式
帝冠様式の特徴を探す
遠目には気づきませんでしたが、近づいて見ると、軒下に垂木のようなものが並んでいて、このあたりは いかにも日本趣味。1934年に完成した九段会館の軒下にそっくりです。
これは垂木を模したコンクリートの装飾なのか、それとも出っ張らせた梁?
別館ビルから本館を見おろすと、帝冠様式のシンボルである上屋を覆う正方形の屋根(方形屋根)がしっかり見えました。
本館建物は、上から見ると日の字型なのだそうです。

車寄せ付近も、和風というか日本趣味っぽい雰囲気。

車寄せから玄関ホールにかけては、軍靴が響いていてもおかしくないほどの威厳があります。平たく言えば、昭和初期の軍服を着た映画のロケに使えそう、みたいな。
思うに、本館の窓辺の花々は、堅く見えがちな佇まいを柔らかく見せるために飾るようになったのかもしれないですね。
でも、九段会館や愛知県庁舎のようにお城の屋根が載っているもの比べれば、全然おとなしいですし、赤っぽい瓦を使っているあたり、市役所本館と同じように ”スペイン風を加味” することを、さりげなく目論んだように思えてなりません。
実施設計の段階で、ギリギリの攻防戦があったりしたのかな?
(素人のテキトーな感想です)
静岡県庁 本館1Fロビー
ロビーに入ると正面にポツンと受付のブースがあり、かなり殺風景な印象。
左に映っているのがそのブース。
係の方がいらしたので正面から撮影できませんでしたが、こういう形のブースは現代では珍しいと思います。良く見てくればよかったです。
- 1Fロビーから上を見上げる
- エントランスの扉
そして視線を上に移すと、見事な吹き抜け!
縦格子のような階段の手すり、柱に刻まれた縦のライン。
エントランスの扉や天窓に見られる亀甲模様のようなモチーフ。
直線のみで作られた縦の線と幾何学模様の組み合わせは、組子障子を思わせます。
- 1階ホール
- 顔になる場所なので、他の使い方をした方が…
- 階段吹き抜け。出窓?
少し前に建てられた市役所ドームとは対極的ですが、県庁も素晴らしかったです。都会にある名建築の壮麗さこそありませんが、徳川家康のお膝元 駿府の県庁にふさわしい建物だと思います。
静岡県庁 別館 21F 展望ロビーに行ってみよう

静岡県庁の別館21階には、無料で一般開放されている展望ロビーがあり、静岡市街・富士山・南アルプス・駿河湾が一望できます。
もちろん眼下には駿府城公園!
展望ロビーは、土・日・祝日もオープンしていて、なんと元旦の初日の出も見られるんだそうです。
※所定の休館日を除く
さらに18時クローズなので、日没時間によっては夜景も楽しめちゃいます。
ロビーフロアは広々としていて、ありがたい冷暖房完備。
椅子もたくさんあるので、ゆったりくつろぐには最高の場所。
県庁内には、食堂、コンビニ、売店もあるので、食事に困ることもありません。
※飲食店・売店は平日の開庁日のみ
ちなみにここ別館は、東海地震などの非常災害の際、防災拠点となる建物なのだそうです。
- 別館21F展望ロビー
- 駿府城公園 発掘現場
今回短い時間でしたが、静岡市役所、静岡県庁と周ってみました。
建築的な見どころとしてはもちろん、どちらも一般来庁者にとって「利用しなきゃ損」ともいえる場所でした。
静岡の街歩きのついでに、旅行の際の情報収集や休憩に、ぜひ市役所・県庁に足を運んでみてはいかがでしょうか。
静岡名物 あみ焼き弁当
あみ焼き弁当の名前で有名ですが、”静岡弁当”という1972年創業の人気のお弁当屋さんです。静岡市民なら知らない人はいないはず。
家で待つ母からのリクエストで、ブタあみ焼き弁当、牛あみ焼き弁当、カツサンドを購入。
- 定番ブタのあみ焼弁当650円
- 両替町のお店
久しぶりで嬉しくて、がっついて食べ始めたものの、半分でギブアップ。
一見小さく見えて、実はものすごい量!
若い頃はペロっと食べられたんですけどね。
中身は見たまんま肉とご飯だけです。
肉好きな方は、静岡に来たら一度はお試しあれ。
