富士山本宮浅間大社の神田川沿いを歩いていると、長いコンクリートの塀越しに目をひく外観の「Mt.Fuji Brewing」さんがあります。
こちらは加和太建設(株)が「ゲストハウス掬水」さんと同時にオープンした、クラフトビールとグリル料理のブルワリーレストラン。
「掬水」さんについては↓でご紹介させていただきました。

A Brewery and Restaurant with a View of Mt.Fuji.
Painstakingly crafted from the blessing of Mt.Fuji spring water, our craft beers can only be enjoyed here.
Looking out from our windows, the magnificent view of Sengen Taisha shrine and the spring waters flowing from Wakutama Pond, source of the Kanda River, makes our beers even moredelicious.
Along with our beers and unforgettable scenery, we feature kiln-cooked offerlings of locally sourced foods for anextraordinary gourmet adventure!Mt.Fuji Brewing– a place of unique tastes and enjoyment enhanced by the charms of Fujinomiya.
from Mt.Fuji Brewing brochure
クラフトビール
何といっても目を惹くのは、ピカピカ光り輝くブルワリーのプラント。見ているだけで、いやがおうにも気持ちが高まるというものです。
プラント写真の一番右(窓側)の釜で麦芽を煮て、真ん中のタンクで発酵させて、左のタンクで貯蔵する、、みたいな一連の工程をスタッフの方が一生懸命説明してくださいました。
ブルワリーには詳しくなく、メモも取れなかったので曖昧で申し訳ありませんが、日本酒の工程に似ていると感じたことは覚えています。
本場ドイツのビール専門家の国際資格”ディプロムビアソムリエ”もお持ちの醸造責任者の方が目指すビールは「飲みやすいビール」。
雑味や硬さがない富士山の湧き水を使ったクリアなビール作りをモットーとされています。
- 琥珀富士
- 3種類のクラフトビア オラッチェ・山吹富士・バイエルン
現在出されているビールは2~3種類、ほかに地元のクラフトビールや日本酒なども提供されています。
”3種類のクラフトビアミニセット”では、函南オラッチェの「風の谷のビール」と、Mt.Fuji Brewingの一番人気「山吹富士」、富士宮の本格ドイツビール「バイエルンマイスター」のものを飲み比べできました。
<Mt.Fuji Brewingのクラフトビール>
・PALE ALE 山吹富士(YAMABUKI FUJI)
・STOUT 黒鳶富士(KUROTOBI FUJI)
・IPA SESSION 藤黄富士(TOHOH FUJI)
・WHITE ALE 琥珀富士(KOHAKU FUJI)
前回来店時は満席で、夫たちが外で飲んだのはイチオシの山吹富士。
今回は違うものをと、琥珀富士をいただきました。
どちらもとても飲みやすかったとのこと。
年配者や女性にはライト系のクラフトビールは嬉しいですが、ガッツリ系がお好みの方にはゲストビールもあります。
お料理
食材は主に富士・富士宮で採れた新鮮な野菜やブランド肉で、馴染みのある生産者さんの名前がズラリ。これはもう間違いない!
- 一本ネギの釜焼きグラタン仕立て
- 富士幻豚ボイル
- 富士幻豚のベーコンとズッキーニのペペロンチーノ
「一本ネギの釜焼き」、切りにくいけどトロリとしたネギが美味!
「ハンバーグ」は、こんがりした焼き色を見るだけで、余計な説明は不要でしょう。友人も絶賛していました。
「ペペロンチーノ」は、ボリューミーなベーコンとズッキーニのコンビネーションが絶妙で、毎日でも食べたい一品。
この日の運転手もまた私。ビールが飲めないことを、これほどうらめしく思ったことはありませんでした。
地元民から外国人旅行客まで多彩なゲスト
地元民も絶賛のお店ですが、国内、海外の観光客にも人気です。
系列の「ゲストハウス掬水」さんは、食堂がないので代わりにこちらを案内するそうです。
私たちがお邪魔した時も、周りはとってもインターナショナルな雰囲気でした。
最高のロケーション
場所は、浅間大社を流れる神田川のすぐ東側という最高のロケーション。
「富士山本宮浅間大社東側市有地整備事業者」として選定され、富士宮市の期待を背負ってスタートしたプロジェクトなのです。
下の写真は、昭和28年にこの場所にあった料亭を写したもの。
写真には写っていませんが、左手に浅間大社があり、かろうじて湧玉池手前にかかる石橋「神幸橋」が見えています。
なんとも風情のある景色ではありませんか。
昔はたくさんの「富士宮芸者」さんたちでお座敷が賑わったそうです。
「Mt.Fuji Brewing」さんの神田川沿いに続くコンクリートの長い塀は、どこか昔の料亭の塀を彷彿させます。
細部までこだわりぬいたデザイン
「Mt.Fuji Brewing」さんは「ゲストハウス掬水」さんと同じく、三島の加和太建設がプロデュース、運営されています。
加和太建設は、三島大社の前にあるおしゃれな商業施設「大社の杜みしま」も施工・所有・運営しており、箱物だけなく歴史や文化も含めて街の活性化を仕掛けているユニークな建設会社です。
こちらの設計はSuppose Design Office。
特徴的な”のこぎり屋根”は、しめ縄などに挟んで下げる白い紙、紙垂(しで)をイメージしているそうです。
周囲は一面ガラス張り。
昼に中から見る浅間大社境内の鳥居や豊かな緑は借景となり、逆に外から見ると大社の緑がガラスに映り込んで、杜が続いているようにも見えます。
- 景色と一体化した外観
- 内観
外席の仕掛けがまた楽しい。
プラントが見える場所にはバーカウンターが置かれ、建物の外周にはぐるりとコンクリートのベンチが。
いえ、これはまさしく縁側(えんがわ)!
そしてその縁側の下には照明が設置され、フットライト兼夜の建物を照らすアクセントになっています。
神田川沿いのコンクリート塀の内側にも縁側が設けられています。
深い軒は、外席の雨よけにもなり、西からのきつい陽射しもさえぎってくれます。
日本人離れしたセンスの良さですが、深い軒や縁側は紛れもなく日本建築の流れをくむもの。
だから世界遺産の大社に違和感なくしっくり似合っているのだと思います。
店内は、固定席にはどっしりとした木製のテーブルと椅子。
動かすことが多いカウンター周りには黒い曲げ木の椅子。
コンクリート、鉄骨、ガラスという全体的に無機質な躯体の中で、上質な木の質感が存在感を放っていました。
窓側の固定席、大人数で座れる中央のテーブル、厨房に面したカウンター席がシチュエーションに応じて配置されていて、本当に良く考えられているものだと感心させられます。
今回は取材のため空いていそうな日時にお邪魔しましたが、中も外も人で溢れかえって活気に満ちた「Mt.Fuji Brewing」さんも絶対に楽しいはず!
終わりに
私的に文句のつけようがない建物の中で、飲み口がいいビールと焼き釜料理をいただく。この組み合わせで居心地が悪いわけがない。
何より、私が生まれ育った町、親子代々名前を授かった浅間大社のたたずまいを壊すことなく、こんなに素敵なレストランを作ってくれたことに感謝しかないです。
桜は浅間大社のご神木。
桜の季節には境内にある約500本の桜が咲き乱れます。
「Mt.Fuji Brewing」さんに映る桜もさぞ美しいことでしょう。
来年の春には忘れずに来たいと思います。

