ダイナミックな海底火山の記憶をたどる絶景の道 「南伊豆歩道(入間~吉田コース)」
南伊豆町入間は、帆船時代には風待ち港でもありました。
いまは釣り客や海水浴客相手の民宿やキャンプ場が何軒かある静かな集落です。
入間バス停から港の西側に歩いていくと「南伊豆歩道(入間~吉田コース)」の案内板。
コース案内板を起点に登り始めるとシイやカシ、ヤブツバキ、メダケが生い茂る薄暗い照葉樹の森です。
森が豊かなほど生き物も賑やからしく、沢ガニ、カタツムリ、カナヘビが次々と。
また途中には「大日如来」の石碑がたっており、この山道が“信仰の道”だったことをうかがわせます。
海底火山の記憶 千畳敷
入間から約40分。やがて視界が開け、眼下に荒々しく複雑な海岸線。
斜面の遊歩道を下り、波打ち際を進むと、目の前に、このコースの見せ場でもある千畳敷の絶景が広がります。
その光景は、伊豆が本州に衝突する前の1000~200万前に浅い海で火山活動をしていた時代の記憶。衝突後に地上に姿を現し、気の遠くなるような時をへて波や風雨によって浸食された風景なのです。
千畳敷は、その名前のように広く平たい岩のテラス。
海底火山の時代に、火山灰が降り積もってできた凝灰岩です。
テラスには、ところどころ人工的に切り取られた跡が。
かつての石切場です。かつて地元の小学校の通学路の敷石にも使われたと聞きます。
千畳敷から三ツ石岬の断崖を見上げると美しい地層が見られます。
海底に降り積もった火山灰や軽石でできている地層。
その美しい縞模様の地層を断ち切るように上に伸びる黒々としてひび割れた異様な地層が見えます。柔らかい火山灰の地層を割ってマグマが上昇した痕跡で「岩脈」といいます。
南伊豆屈指の穴場海岸 吉田の浜
千畳敷を離れ、吉田を目指して遊歩道を歩きます。
道標から20分ほど登っていくと高台に出て、右手の眼下に小さな岬が抱え込むようにした吉田の浜が見えます。
見晴らしのいい高台から急斜面のカヤの原を下っていく途中に「足元注意、落石注意、横風注意」という看板。“横風注意”って?聞けば、冬場は季節風(西風)強く、立っていられないくらいだとか。
坂道を下ると、富戸の浜。砂浜ではなく、小石に覆われたゴロタ浜。
ひと気のない浜に立つと足元でカラカラと小石の鳴き声が…。
富戸の浜から吉田までは急坂があり、眺めのいい高台にでます。
そして、下ると吉田の浜です。入間からだいたい3時間くらいの道程です。
吉田は戸数10数戸という寂しい集落。浜は夏場には海水浴場になりますが、南伊豆のなかでも穴場の海岸のようです。
伊豆石の石垣とビャクシンの巨木に会いに 白鳥神社
海岸から5分ほどのところに白鳥神社があります。
草むした参道をたどると神社の登り口に異形の巨木がドーン!
推定樹齢800年のビャクシンです。
凝灰岩の伊豆石を積み上げた境内の石垣は立派で、境内にはビャクシンやソテツが葉を茂らせる独特の雰囲気。
この神社の創建ははっきりしませんが、航海安全や安産の神様のようです。
安産祈願するとき、夫婦でおみくじを引き、無事に生まれたら小穴を開けた柄杓と麻紐を持ってお宮にお礼のお参りをする一風変わった習わしがあります。
起伏のある少々きつめのコースですが、その分だけダイナミックな景色を堪能できるはずです。
