ゴールデンウィーク初日、伊豆高原で用事をすませた帰りに、一碧湖と大室山に寄ってみました。今回は夫に代わって私たぬこがご案内します。
目次
地魚ランチなら 伊東漁協の「波魚波(はとば)」
「ジオパークトレッキングガイド」や「しずおか港町の海ごはん」を書いた夫のおすすめは、伊東漁協直営の「波魚波(はとば)」。
まあよくある漁協の食堂だろうと思っていたら、目の前に現れたのは漁協らしからぬ建物。そしておよそ接客業に慣れている風ではない鉢巻をしめたおじさんがメニューとお水を運んでくれます。
メニューを見ると、普段よくスーパーで見る魚があまりないし、写真もない。
その理由はこれでした!↓

ここは以前にファミリーレストランだった建物を使っているそうです。
さすが伊豆ジオのお膝元だけあって、メニューにジオ丼もありました!
- いとう漁協「波魚場」
- アジとイワシのフライ
- ジオ丼
アジ&イワシフライもジオ丼も、とにかく器や具がデカい!
器は普通の1.5~2倍くらい、ジオ丼の刺身の厚みは1.5cmほどもあったでしょうか。
アジフライを美味しいと思ったことがない私が、ここのは美味しく食べられました。分厚い切り身に驚いたジオ丼も、新鮮で美味しかったです。
ランチ一人1,500円前後で活きがいい伊豆の地魚が食べられる、なかなかいい食堂でした。
伊豆東部火山群とは?
雷雨予報にもめげず、午後は一碧湖を通って大室山に登ってみようということに。
調べてみると、大室山も一碧湖も「伊豆東部火山群」に属する火山だそうです。
えっ?一碧湖も火山?!
そもそも伊豆半島は、100万年ほど前、南海の海底火山群が本州に衝突隆起してできた半島です。
約20万年前までは、天城山や達磨山のように火山が何度も噴火を繰り返して大型化(複成火山)し、現在の伊豆の基本形ができ上がりました。
大型火山の活動が終わる約15万年前以降になると、1回だけの噴火でスコリア丘やマール(爆裂火口)を形成する単成火山群の活動が始まります。
つまり大室山や、マールに水が貯まってできた一碧湖も、1回の噴火で形造られた単成火山ということです。
陸上にあるこれら東伊豆単成火山群と、その東方沖にある東伊豆海底火山群を併せて「伊豆東部火山群」と呼ぶそうです。
参考: 伊豆半島ジオパーク成り立ち
伊豆東部火山群も活火山
現在は休火山・死火山という設定はありません。
活火山とは、「概ね過去1万年以内に噴火した火山 及び 現在活発な噴気活動のある火山」 であると火山噴火予知連絡会によって定義されています。
で、伊豆東部火山群は、れっきとした常時観測対象の活火山の集まりなのです。
実際、1989年には伊東市沖で海底噴火がおこり、手石海丘という海底火山が生まれました。当時のニュース映像がぼんやりと記憶にあります。
幸い現時点では噴火警戒レベル1(平常)で、噴火の兆候は見られないそうですが、出かける前に気象庁の「噴火警報・予報」をチェックしてみるのも、東伊豆を深く知る助けになるかもしれません。
噴火警報・予報 /気象庁
伊豆東部火山群で予想される活動推移、噴火の影響が及ぶ可能性のある範囲/気象庁 (pdf)
雨にかすんだ一碧湖

一碧湖は、周囲約4kmのこじんまりした湖で、大池(おおいけ)と小さな沼池(ぬまいけ)の2つから成っています。約10万年前の爆発的な噴火でできた火口に水がたまったもので、それぞれ別の爆発で出来た火口なのだそうです。
車で乗り付けるのも気がひけるくらい、あまり俗化されていない、つぶらで素朴な湖で、「伊豆の瞳」と呼ばれるのも良くわかります。
元火口の湖底は今どうなっているんだろうなどと漠然と考えつつ、小雨が湖面を打つのを見ながら、日本百景にも挙げられた景色をゆっくり堪能させてもらいました。
湖畔には遊歩道が整備され、ボート桟橋のそばには新しくカフェがオープンしていました。う~ん、個人的には自然のままがいちばん美しいと思うんですどね。
雷雨ニモマケズ 大室山に登った
伊豆半島にある、お椀を伏せたような形の、妙に緑色が鮮やかな山の航空写真を、一度は見たことがある方も多いのではないでしょうか。
下の大室山リフトのホームページにある、こういうヤツです。
静岡県人である私は、もちろん伊豆には数えきれないほど行ったし、伊豆高原にも行きましたが、大室山を近くから見ると、ただのなだらかな丘みたいに見えて深く印象に残らなかったのです。
しかし、インターネットなどで情報が入りやすくなり、上空から撮影した大室山の写真を見た時には目を疑いました。「何これ?!」
大室山の成り立ち
大地から唐突に突き出た山の形がとても不思議で、伊豆半島ジオパークのサイトで調べてみました。
大室山は伊豆東部火山群の中で最大のスコリア丘です。
約4,000千年前の噴火によって、粘り気の弱い溶岩のしぶき(スコリア)や火山弾が火口の周囲に降りつもってできました。
毎年おこなわれてきた「山焼き」によって、お椀を伏せたような美しい山の形が保たれており、山全体が国指定の天然記念物となっていますj。
引用: 伊豆半島ジオパークwebサイトより
何となくわかったような、わからないような・・・。
でも、現地にはちゃんと「スコリア丘のでき方」の説明看板が設置されていました。
それも私にもわかるように絵付きで! (クリックで拡大)
溶岩が噴出した割れ目の跡が気になりますが、まあ間違いなく閉じているんでしょう・・・?
700年の伝統「山焼き」
青々とした芝生で覆われているかのような山肌も、大室山の不思議のひとつ。
実は地元の方が「山焼き」によって維持保全されており、700年にもわたる伝統行事になっているそうです。
700年前といえば、1300年代鎌倉幕府が滅亡した頃? ものすごい歴史です。
大室山は全身 「茅(カヤ)」で覆われていて、昔は良質な「茅」を収穫するために焼かれていたものが、現在では山の保全ときれいな若草を生えさせて観光資源にするための野焼きになっています。
だから、当たり前ですが一年中緑色ではなく、秋冬には「茅」は枯れ、降雪があれば真っ白い大室山になるようです。
「山焼き」は毎年2月の第2日曜日に行われます。山すそから点火して、30~40分ほどで全山真っ黒になり、有料で観光客も参加できるそうです。
大室山リフト
大室山は国の天然記念物のため、リフト以外で山に入ることは禁止されています。
私たちがリフト乗り場に着いた時には雨も小康状態だったので、思いきって頂上を目指すことに。
リフトは標高580mを片道約6分で昇降します。かなりゆっくりです。
山肌からリフトまでの高さはそんなにないので、高所恐怖症の私でも何とか登れました。でも振り向いて下を見るなんて絶対無理!
代わりに夫がドローン風に撮影してくれました。(下右)
雷雨の上に低温予報だったので、さすがに駐車場もガラガラ。
- 大室山リフト
- リフトから下を撮影
山頂火口に到着するも・・・
山頂の眺望は360度の大パノラマ!のはずが、私たちが着いた時には一面の霧で真っ白。
土砂降りで気温も低くて10度くらい。
寒くて寒くて、1件しかない売店に入ってコーヒーで体を温めました。
たぶん中国からのツアーだと思われる観光客たちが、狭い店で心配そうに外を見守っていました。外国人観光客あるあるですが、短パンの人もチラホラ。
山の天気は本当に変わりやすく、しばらくすると霧が引いて緑色の火口が姿を現し始めたので、皆一斉に外のテラスへ。
しかし、霧は引いても土砂降りは相変わらずでした。
本来なら山頂からは直径300mのすり鉢状の噴火口が一望でき、また噴火口を周回する約1㎞の「お鉢めぐり」は、遠くまで見渡せる絶景ポイントなのですが、この日唯一見えたのは火口のアーチェリー場・・・。ほんと、やめて。
目を凝らすと、売店の対岸のお鉢の縁に人がいるのが見えました。
この大雨強風の中、なんというツワモノ!
- 大雨の火口
- 天然記念物の看板
ホテルみたいなトイレから絶景
暖かい売店の中は満員で身動きも取れない状態でしたので、ひとまず真新しいトイレへ退避。
入ってすぐ右が大きな展望窓になっていて、素晴らしい眺望です!
窓に向けてソファ風のベンチまで置かれていました。
雨風や寒さもある程度しのげるので、しばらくトイレから火口鑑賞していました。
トイレ横の通路沿いには、工事で掘り起こされたスコリアが使われていました。表に出たスコリアを見られる貴重な場所です。レンガのような色でザラザラしたものでした。
これが大室山の御本体というわけですか。
- 大室山山頂の美トイレ
- トイレ工事で掘り出されたスコリア
外はいよいよ雨が強まり、雷まで鳴り出しました。
ツアーガイドさんが「雷雨がひどくなるから急いで下山するように!」と呼びかけているので、私たちも一緒に下山することにしました。
大雨でずぶ濡れになった体に容赦なく強風が吹きつけ、おそらく体感気温マイナス5度以下の中を、雷鳴を聞きながら必死でリフトのバーにしがみついて何とか下山したのでした。かなり過酷ながら結構楽しい体験でした。
大室山のふもと さくらの里と溶岩洞穴
リフト乗り場から車で数分、大室山のふもとに「さくらの里」が広がっています。
私たちが行った4月の終わりにも、まだかなりの数の桜が咲いていました。
それもそのはず、数十種類 約1500本の桜が植えられていて、9月中旬から5月初旬までの約8ヶ月間、何かしらの桜が咲いているそうです。
「さくらの里」の少し奥まった所に、「穴の原溶岩洞穴」があります。
大室山が噴火した際、中に空洞を残したまま地表の溶岩が固まり、後に地表部分が陥没してできた穴だそうです。
そういえば、静岡県御殿場市の「富士山樹空の森」で「溶岩樹型」を見たことがあります。溶岩が樹木の上を流れて固まり、中の樹木は高熱で燃え尽きて空洞だけが残るというものでした。
どちらも、ぽっかりと開いた黒い口が怖くもあり、地底探検へ誘っているようでもありました。
