中伊豆の名瀑 浄蓮の滝
天城の浄蓮の滝は「日本の滝100選」に選ばれた美しい滝。
観瀑台から飛沫浴は体感できませんが、ジオの目で見ると、それを補う面白さがあります。
瀑布から目を移すと、整然とした切れ目を持つ柱状の岩壁。
火山から流れ出した溶岩が冷えて固まったときにできる柱状節理。
溶岩の隙間からは水が滴り落ちていて、大きなシダが垂れ下がっています。
ハイコモチシダ(浄蓮シダ)といい、国内では伊豆と九州の一部でしか確認されていない珍しいシダ。
瀑布、柱状節理、浄蓮シダの3点セットで眺めてみると味わいも変わってくるかもしれません。
それにしても浄蓮の滝の溶岩はどこから流れてきたのでしょうか。
その答えは観光センターの駐車場から見える何の変哲もない鉢窪山(標高674m)。
昔は茅場だったそうですが、この山、れっきとした火山。
1万7000年ほど前に噴火し、そこから流れ出した溶岩が茅野溶岩台地をつくり、浄蓮の滝を生んだのです。
その証拠に、山頂には火口跡が窪みとして残っています。
「鉢窪」という名前も、その窪みに由来しているのでしょう。
伊豆の踊子の舞台「踊子歩道」を歩く
浄蓮の滝の駐車場から「踊子歩道」へ。
かつて下田と東海道の宿場として栄えた三島を南北に結ぶ約60kmの旧下田街道の一部。踊子歩道は、しばらくは国道414号線と平行して緩やかに上ります。
歩道の脇には田んぼや民家があり、山の神が祀られており、観光地とは違う山村の風景。
いざ天城の森へ
浄蓮の滝から歩いて50分ほどで道の駅「天城越え」。
そこから、しばらく進むとスギやヒノキの大木に混じってヒメシャラやカエデといった落葉樹が混じる気持ちのいい森。
江戸時代、この一帯は幕府の直轄領で木の伐採が厳しく制限されていました。領民が伐採できるのは薪や炭にする雑木で、その雑木を伐採した後にはお礼にスギを植え、山中には、そうやって植えられた「お礼杉」が残っています。
人気のジオサイト 滑沢渓谷
道の駅から20分足らずで滑沢渓谷の入り口。
新緑や紅葉の美しさで知られる渓谷ですが、“滑沢”は、文字通り、つるつると滑らかな川床を水が流れています。
川床の正体は一枚の溶岩なのです。
水際に降り立つと水に濡れた岩は黒々と光沢を放っており、ところどころに割れ目が。
火山から流れ出した溶岩が冷やされるときの収縮によってできた亀裂(節理)なのだといいます。
その後、溶岩の上を水が流れ、長い歳月をかけて磨かれたのが滑沢渓谷。
溶岩の出所は「滑川火山」と推定されていますが、その火口は特定できていないとか。
天然記念物の巨木 太郎杉
滑沢沿いの遊歩道を3、40分ほど登っていくと、右手の奥にスギの巨木がすっくと立っています。
推定樹齢450年以上、樹高53m、幹周り13.6mの太郎杉。
「森の巨人たち100選」』にも選ばれている天城一の大スギです。
周囲のスギを従えるように空に向かって伸びる姿は威厳さえあります。
