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アメリカの病院と日帰り手術
私たちが向かうのは、NCH(Northwest Community Hospital)という急性期病院で、基本的には急患や重症な病気に対する治療や手術を行う総合病院です。
この病院には「Day Surgery Center」という日帰り手術専門の施設が併設されていて、うま君はそこで手術を受けます。
「前十字靭帯断裂」の手術は、日本だと最低でも10日は入院するらしいのですが、アメリカではあっさり日帰り手術。(症状にもよると思います)
高い医療費のせいなのか、なるべく早く体を動かした方が良いからか、いずれにしても医療と患者双方に有益なシステムなのでしょう。
日本でも、大きな総合病院(急性期病院)に行くには紹介状が必要な場合が多く、急性期を過ぎれば、地域連携のクリニック・かかりつけ医に移されます。
または、クリニックのドクターが総合病院の施設を借りて、自ら手術する場合もあります。
うま君の場合は後者で、初めはドクターのオフィス(クリニック)に何回か通っていて、そのドクターがNCHで執刀してくれることになっています。
病院までの移動手段は、うま君が昨夜のうちに Uber を予約。
予約通り朝5時過ぎにはアパートの前で待っていてくれました。手術前という緊張からでしょうか、病院までの道のりや初Uberのドライバーさんのことは忘却の彼方。予約時間少し前には病院に到着できました。
↓まさにここが日帰り手術をした病院。手術室も見られます。
長い一日のはじまり
金曜日 5:30am 病院へ到着。
受付を済ませると、手術の関係書類にサインを求められます。
執刀医はこの病院のドクターではないので承知してください、などの文言のほか、日本の手術承諾書と同じような内容のチェック項目がレターサイズの紙にぎっしり並んでます。
受付の方に「読むのに時間がかかるので、口頭で要約してくれませんか?」とお願いしたら、日本語のフォームを持ってきてくれました。
様々な人種が暮らすアメリカでは、初めは当然のように英語で対応されます。
日本では、肌の色が違うと余計な気を回してしまいがちですが、それが逆に
ありがた迷惑になることも。線引きが難しいところです。
6時半過ぎ うま君連れていかれる
やがてうま君は術前準備に向かい、私は「呼び出しベル」を渡されて待合室で待つことになりました。
日帰り手術ができるくらいだから、おそらく1~2時間くらいで終わる簡単なものだろうと勝手に思い込み、所要時間を確認しなかったのは、完全に私の落ち度。これから始まろうとしている戦いを、この時はまだ知る由もありませんでした。
1~1時間半ほどして ベルコール
終わった?と思いきや、麻酔が効きはじめて横たわるうま君の所へ連れて行かれ、「これから手術だから、ハグしてやって」と看護師さんに促される。
「えっ、いや、彼も嫌がると思うので」と手だけ握って励ますも、まわりの看護士さんたち、怪訝な顔して苦笑。
日本人、こんな時でもハグなんてしないのよ…。
またまたベルコール
もう終わった?とぬか喜びするも、ちょっとした状況報告でした。
今さら終わる時間を確認するのもためらわれ、本を読んだり、テレビを見たり、ドリンクバーで飲み物をいただいたりして、ひたすら待つ。
玄関先をうろうろしてみるものの、いつ呼ばれるかわからないので遠くにも行けません。
他にも2家族ほど待っていましたが、一人ぼっちは私だけ(寂)。
12時頃 ベルコール
ついに終了!
「ドクターから術後の説明があります。」と小部屋へ案内されました。
先生は「たいへんな手術でしたが成功です。」と、にっこり笑って、大きな両手で私の手を握ってくださいました。
暖かくて、大きな優しさに包まれている安心感で、ついほろり。
そんなに たいへんな手術だったなんて!
詳しい説明を聞く際に通訳が頼めるとのことで、速攻でお願いしました。
タブレットから通訳さんに電話をして、スピーカー機能で皆で話をするシステムだと思います。
以下のような説明をしていただきました。
- 必ず松葉杖を使って、右足は下につけないように。
- アイシンング用の保冷剤の使い方
- 次の診察日時と場所の確認
- ボルタレン(痛み止め)、イブプロフェン(抗炎症、鎮痛剤)など日本でもお馴染みの薬の他、便を柔らかくする薬の説明と飲み方
- 一時間に5回以上吐くようだったら電話をするように
担当医はドナヒュー先生というお名前で、スポーツ医学を得意とする整形外科医。海軍で第一次湾岸戦争に行った経歴もあるそうです。
世界には悲惨な戦場を経験したお医者様が、まだ普通に現役でいらっしゃるのだと、複雑な思いがしました。
お話も終わり、あとは麻酔が覚めるのを待つだけです。
13:00pm 頃 ベルコール
「もう会えますよ」と言われた時は、本当に嬉しかった。
(やっとご飯が食べられる~)
回復室?に通されると、そこには麻酔から覚めかかっているうま君がいました。※上に張ってあるYouTubeの静止画像の部屋です。
看護師さんから、油っこいものは避けて消化の良いものを食べるように、などの説明を受けながら、うま君の意識がはっきりしてくるのを待ちました。
「あと30分ほどで帰れるので、タクシーを退院口に呼んでください」と言われても、「タクシーなんて呼んだことないし、退院口なんて説明できないし。正面玄関じゃだめなわけ?」とオロオロしていたら、うま君が自分のスマホをおもむろに取り出すではないですか!
あれ、呼んでくれるのかと思ったら、私に渡してこれでUberを呼べと、またもや無茶振り。病院内を迷いながら、わざわざ退院口まで行って「現在地点まで呼ぶ機能」(正式機能名は??)でUberを呼んでみる。走って叱られる。ボロボロだ、私。
うま君があらかじめ保険関係の手続きは済ませておいたんでしょう、病院では一切支払いをせず、松葉杖と処方箋を渡され、そのまま退院となりました。
※今さらですが、病院のサイトで施設マップを見てみたら、隣の建物にカフェやらファーマシーがありました。(脱力)
無駄に待っている間に、サイトを調べるか、受付の方に確認すればよかった。
処方薬もらいに。そしてこんな時に iPhone紛失
やっと帰れる!
しかし、迎えに来てくれたUberのドライバーさん、黒い皮ジャンに、黒い帽子、黒いサングラス!
一瞬体が固まりましたが、明るく話しかけてくださったので一安心。
手に障害がある方のようで、証明書が運転席に掲げられていました。
処方薬をもらいにドラッグストアに寄るようにお願いして、通りがかりのCVSという大手ドラッグストアチェーン店へ。
ところが、処方薬の待ち時間 2時間!と言われ、やむなく一旦帰路につきました。他に処方箋のお客さんいないけど…。
14:30頃 帰宅。
腰を下ろして、やっと食事にありつけると思った次の瞬間、また試練が!
うま君のiPhoneがない! 多分Uberに忘れた!
うま君が、MacBook上で ”iPhoneを探す”機能を発動すると共に、Uberを通してドライバーさんに、「iPhoneを忘れてしまったので、友人の電話番号に電話が欲しい」と連絡しておきました。
なぜ友人通しかというと、私が使用している”アメリカ放題”だと、日本の電話番号のままなので、先方からかけると国際電話扱いになってしまうのです。
お友達が仲介してくれたお陰で、無事ドライバーさんからスマホを受け取り、うま君の元へ。
ドライバーさんには、そのまま先ほどのドラッグストアに行ってもらうことにしました。
ドラッグストアでは、アレルギーはないかとか、ID番号(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)を聞かれたので、うま君にFacetimeのビデオ通話で薬剤師さんに対応してもらい、薬を受け取ることができました。
代金は、co-pay(自己負担額)の分だけうま君のデビッドカードで支払いました。
実際に処方してもらった薬は、先生の説明とは違う薬でしたが、ジェネリック薬だったのかな? 余談ですが、錠剤が入ったボトルのフタ、開け方が難しくて最初はイラっとしましたが、子供の誤飲防止用だと気づいて納得。
最高のドライバーさんとの出会い
薬のピックアップ時、Uberを通さずに乗せてもらったので、ドライバーさんにCASHで払うからATMに寄ってくれるようにお願いすると、無言でどこかへ走り出します。
「ATMに向ってます?」と聞くと、「いや、うち」という返答が。
聞き間違いかとも思いましたが、
「すぐそこだし、今日は奥さんもいるから。」と。
(心の声:え~!嘘~!マジで~?!)
微妙な空気が流れる中、間もなく車は緑が多い落ち着いた住宅街へ入って行きました。
「ここがうち、あ、庭にいるのが奥さん。入ってもらえなくて申し訳ないけど」と、「スッピンで恥ずかしい」とおっしゃる奥様に紹介してくれました。
私が料金を払いたいのでATMに行かなきゃと言うと、奥様は私を優しくハグして「主人はいい人だから大丈夫よ。早く帰って息子さんの看病してあげて」とマリア様のように微笑んでくれました。
ハグって、何て暖かいんでしょう。
アパートへの帰り道、「Uberのドライバーになって以来、初めてお客さんを家に連れて行ったよ。」と強面の顔で恥ずかしそうに呟いていたのが印象的でした。
結局ATMには寄らなかったので乗車料金を払えず、代わりに日本から持っていった食品やお土産などを受け取っていただきました。
日本に来ることがあったら連絡してください、と言い添えて。
とてもいいドライバーさんで、終始ご家族の自慢大会。本当に素敵な奥様でした。
と、この話をうま君のお友達に話したら、「危ない!」と叱られました。
ついて行ったわけじゃないんですが、まあ、普通に考えればそうですよね。
車中の会話を振り返っても、絶対に悪い人であるはずなかったんですけどね。
う~ん…難しい。良い子は真似しないように。
やっとひと段落、「前十字靭帯」手術後の様子
16時頃 何とか一段落。
うま君、手術直後だというのにアクシデント多発でゆっくり休めず。
でも、あなたのiPhoneのせいなのよ。
昨夜の夕食以来 何も食べてなかったので、ボブチンのお持ち帰りで夕食を済ませました。
やっとうま君の足の様子をじっくり見てみます。
うま君の足は、テープをグルグル巻きにした上からコルセットで締めてあります。(下の写真です。汚くてすみません)
ドクターはバンデージと呼んでいましたが、3日くらいで はずしても良いと言われています。
足を床に着かないように、二本の松葉杖は必須です。
横になる時は足を高くして、もらってきた保冷剤を1時間毎に15分程度、足にあててアイシング。
2時間に1度は歩くように言われていたので、トイレや着替えなど最低限身の回りのことは自分でがんばってやっていました。
家では、痛くても痛み止めを飲むか、アイシングくらいしか対処法がありません。土曜・日曜が挟まるので不安でしたが、病院から丁寧なフォローの電話があり、容態を確認後、緊急連絡先も教えてくれました。
手術後1週間くらいで運転できると聞いていたそうなので、その頃には仕事に行けるかもしれません。
この日は、うま君は痛みで、私は疲れ過ぎて、あまり寝られませんでした。(時差ぼけ?)
こんなドタバタな私の体験でも、皆様のお役に立てましたでしょうか?
もし文中に間違いがあったり、他にも同様の体験をされたお話など、下のコメント欄から教えていただければ嬉しいです。
「日米の文化における最も大きな違いは ハグかも」
